ガイドブックにはなかなか載っていない、イタリア観光を100倍楽しく&充実する&知れば知るほど楽しくなる各地のぷち情報
『ヴェネツィアの守護聖人は、聖マルコってわかるんだけど、そもそもどんな人なの?』『聖マルコは、なぜ翼のあるライオンなの……』『翼のあるライオンと有翼の獅子とは同じなの違うの……』と思いませんか?
観光情報をみても、Wikipediaをみても、よくわからないですよね(T_T)。ということでガイドブックには載っていない「聖マルコ」の基本のキを学んでみましょう。
聖マルコとは、イエス・キリストの生涯と教えを記した書「マルコによる福音書」を、西暦70年頃に記述した人です。「福音書を記述した者」=「福音書記者」ともいいます。福音記者マルコのイコン
By 18 century icon painter [Public domain], via Wikimedia Commons
ところで、聖マルコが、「イエス・キリストの生涯と教えを記した」といっても、イエスと同じ時代に生きてはいません。「マルコによる福音書」はイエスが死んでから約70年後に完成した書です。なので聖マルコは、イエスの行動を直接見ていませんし、イエスの言葉も直接聞いていません。
マルコによる福音書 は、新約聖書の一部です。ちょっとわかりずらいですね。整理しますね。新約聖書は、全部で27の「書」から成り立っています。その27の「書」のなかの1つの「書」が、「マルコによる福音書」になります。
ラテン語で手書きされた聖書
By Anonymous (photo by Adrian Pingstone) (Own work) [Public domain], via Wikimedia Commons
聖マルコは聖なる人である「聖人」です。そしてキリスト教には、聖マルコの他にも聖人と呼ばれる人は多数いて、聖人の上下関係(=ヒエラルキー)があります。その多数の聖人の中で、聖マルコは上から2番目の上下関係(=ヒエラルキー)に属しています。
ヴェネツィア共和国が建国され、100年くらいたった頃、ヴェネツィアの人たちは『できるだけ地位の高い守護聖人が欲しいなぁ』と思っていました。そんな時に、聖マルコの遺骸が手に入ったので『よっし!ヴェネツィア共和国の守護聖人にピッタリ!』というわけで、守護聖人にしたわけです。
ちなみに聖人の上下関係(=ヒエラルキー)の2番目には、聖マルコのほかにも複数の聖人がいます。なお聖人の上下関係(=ヒエラルキー)のトップは、イエスの教えを直接聞いた「12人の弟子たち(=12使徒)」です。
聖マルコは、なぜ翼のあるライオンなのか? それは新約聖書の一部となっている「ヨハネの黙示録」に、聖マルコが「翼のあるライオン」として描かれているからです。下図の右上がマルコの象徴である「翼のあるライオン」です。
福音書記者の象徴
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「ヨハネの黙示録」とは、キリスト教が迫害を受けていた時に、信仰をつらぬくために書かれた「書」です。西暦90年頃にできました。
「ヨハネの黙示録」では、迫害を逃れるため、キリスト教徒以外にはわからなない表現をしました。キリスト教徒以外にはわからなない表現として、聖マルコは「翼のあるライオン」として描かれたのです。
ちなみにライオン=獅子なので、「翼のあるライオン」=「有翼の獅子」です。
どうですか? 聖マルコさんをヴェネツィアの人が守護聖人としている理由がわかっていただけたのではないでしょうか?(^^;。最後にヴェネツィアにある聖マルコ・翼のあるライオン・有翼の獅子の写真をご覧ください。
サンマルコ寺院の正面には、「聖マルコ」の像と「翼のあるライオン」の彫刻があります。
サンマルコ小広場からみると、石柱の上と時計台とに聖マルコの象徴「翼のあるライオン」がみえます。時計のはちっちゃいです(^^ゞ。拡大してみてネ。
上記写真サンマルコ小広場の石柱の「翼のあるライオン」のアップです。
15世紀の画家カルパッチョが描いた聖マルコの象徴「翼のあるライオン」。後ろに鐘楼とサンマルコ寺院とドゥカーレ宮殿があるのがみえます。
ヴェネツィア共和国(7世紀末期~1797年)の国旗に描かれている聖マルコの象徴「翼のあるライオン」です。